■アトピー性皮膚炎とは
  最近、アトピー性皮膚炎の患者さん、特に成人型のアトピーが増加しているといわれています。
実際に患者数が増えているかどうかは別にして、マスコミなどでも特集などが組まれるためアトピーに対する認知度は非常に高くなっていると思います。
しかし、治療の主体となるステロイドの副作用の面や、食物アレルギーをはじめとするアレルギーの側面などの一部が強調されたり、誤った情報が氾濫しており、必ずしも正確に理解されていない面があると思います。

日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の定義、診断基準があります。それによると「アトピー性皮膚炎は、憎悪、寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー要因をもつ。」とあります。
すなわちアトピー性皮膚炎とはアレルギーの素因(喘息、アレルギー性鼻炎など)のある人に慢性に繰り返し出来る全身的な湿疹だということです。もちろんカブレやその他の全身に出来る皮膚病は除外しなければなりません。

アトピー性皮膚炎=アレルギーと考えられている方が多いと思いますが、アトピーの湿疹は必ずしもアレルギー反応だけで出来るものではありません。もうひとつ重要なのは皮膚の角質のバリアー機能が落ちているため、外的な刺激を受けやすくそのために湿疹が出来たりひどくなったりします。

よく血液検査でIgEという抗体を測ることがあります。IgEの総量、あるいは特異的な
IgE(たとえばダニに対するIgE、卵白に対するIgEなど)を測定しますが、IgEが低いからアトピー性皮膚炎ではないとは言えず、あくまで参考的なもので、アトピー性皮膚炎は臨床的な症状で診断します。そのためにも専門医に相談することが大切です。
   
■アトピー性皮膚炎の治療
アトピー性皮膚炎の炎症は湿疹性の病変です。そのためまず湿疹を治す治療が必要です。現在ある薬の中で有効なのはステロイド外用剤、非ステロイド系消炎外用剤、タクロリムスなどです。ステロイド外用剤は副作用の面が非常に強調され、怖い薬のようにみえますが、決してそうではなく、使い方さえ間違えなければすごく効果のある薬です。

非ステロイド系消炎外用剤は、効果が少し弱く、人によってはカブレる場合があります。しかし皮膚の萎縮などの副作用はありません。
タクロリムスは日本で開発された薬です。免疫調節薬で、炎症を抑える効果はストロングクラスのステロイド外用薬に匹敵しますが、刺激感が強いのが難点です。しかし皮膚の萎縮などの副作用はなく、今後はこのような系統の外用薬が次々と開発され主流になっていくのかもしれません。

アトピー性皮膚炎の治療は湿疹病変を治すだけでは不完全で、併行してスキンケアーおよび刺激を与えないような注意が必要となります。アトピックドライスキンという乾燥性の皮膚のためバリアー機能が落ちているので保湿剤を併用する必要があります。

また、衣類でこすれたり、汗の刺激や掻く刺激で湿疹が悪化するため、それらに対する注意も必要です。痒みがあると無意識のうちに掻いたりするので、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤の内服も必要な場合があります。
また当院ではこれらの治療と併用して特殊な光線療法をおこなっています。
ソフトレーザーナローバンドUVB療法などです。
   
■尋常性乾癬
この病気の臨床像は特徴的で、皮膚科専門医であればまず診断を間違うことは少ないと思われます。
全身どこにでも発現しますが、主に外的刺激を受けやすい部位にできます。境界明瞭な紅斑の上に厚い銀白色の鱗屑をつけた皮疹が特徴的です。

この病気の原因は実はまだ完全には解明されてはいません。まず素因的なものがあり、そこにいろいろな後天的な要因(外的、内的)が働いてできるのではないかと考えられています。
最近では免疫系の反応が大きくクローズアップされ、T細胞と呼ばれるリンパ球が大きな役割を果たしているのではないかと推測されています。

治療は外用薬、内服薬ありは光線療法などがあります。外用薬としては以前から副腎皮質ホルモンが使われてきましたが、最近ではビタミンD3の軟膏が開発され徐々に治療の主体になってきています。内服はビタミンAの誘導体や、免疫抑制剤、なかでもシクロスポリンが使われます。効果は期待できますが、副作用に注意して使う必要があります。光線療法はPUVA療法、ナローバンドUVBなどがあります。

いずれにしてもこの病気は寛解、増悪を繰り返したり、今まで効果のあった治療が急に効かなくなったりすることがあるので、いろいろな治療を組み合わせたり、あるいは変更したりしていい状態を維持するようにもっていく必要があります。